株式会社 風

顧客内シェアとは

市場シェアは皆さん意識していると思いますが、「顧客内シェア」は意識されていますか?
市場シェアは、ご存じのとおり市場全体に対する自社の取り分の割合です。
それに対して、「顧客内シェア」というのは、ある顧客の仕入れ量に対する自社製品の販売量の割合です。(BtoCなら顧客の財布内シェアと言ってもいいでしょう。)
市場シェアも顧客内シェアも、もちろん多い方が良いものです。

リソースには限りがある

しかしながら、自社のリソースは無限にあるわけではありません。
特に、人に値段を付けて売っている(コンサルタントのように)場合は、社員の稼働率が100%になったところで頭打ちになってしまい、市場シェアも顧客内シェアもそれ以上増やすことはできません。協力会社のスタッフに自社の服を着せて使うという手もありますが、それをやると自社の社員に比べてリスクも手間も増えますし、シェア以前に品質的な注意も必要になるので、私はあまりお勧めできません。可能であれば直接契約してもらう方が無難でしょう。

話を戻します。
限られたリソースをどこにどういう割合で分散させるのが良いのか、と言う話なのですが、例えば顧客が一社の場合、その唯一の顧客が傾いたら共倒れになってしまいます。なので、一般的には「顧客を増やすことでリスクを分散しよう」ということになります。

リスク分散の弊害

ところが、です。
「リスク分散」の名のもとに顧客数を増やしてしまうと、当然ながら各顧客の「顧客内シェア」は低くなっていきます。

すると、何が起こるかと言うと、
「ちょっと景気が悪くなると、簡単に契約を切られてしまう」
と言うことが起こります。
顧客数を増やしすぎて顧客内シェア低くなっている場合、近頃のように社会全体の景気が後退すると、同時に全ての顧客から契約を打ち切られてしまう可能性まで高まってきます。

私が以前コンサルティングサービスの営業をしていた時、せっかく見つけた顧客に、簡単に契約を切られてしまう(理由の多くは「お金がない」。競合に比べてかなり高めの価格設定をしていたので)、と言うことがたびたび起こりました。幸い、新規顧客を見つけることにはそれほど苦労はなかったので、致命的なことになったわけでもないのですが。そのとき私は、「顧客への影響力が少なすぎるために簡単に切られてしまっているのではないか?」と言うことに気付きました。

つまり、顧客数を増やすことでリスクを分散させているつもりが、逆に契約を打ち切られるリスクを高めていたのです。

どうすればいいのか?

じゃあ、どうすればいいのかと言うと、お客さんが「もう、あなたの会社ナシには生きて行けません。」と言ってしまうような状態を、できるだけ少ないリソースで作りあげることを目指せばよいのです。

「もう、あなたの会社ナシには生きて行けません。」と言う状況を作る方法は二つあります。

一つは、単純に量的な顧客内シェアを上げることです。たとえば、「あなたの会社がいなくなると、私の会社の商品の生産量が半分になってしまう」と言われるようにすることです。

もう一つは、質的な顧客内シェアを上げること。どういうことかと言うと、「他の誰にも真似できない価値を提供する」ということです。「顧客を自社のファンにする」と言ってもいいかも知れません。

例えば、コンサルタントという職業は、人間自体が商品なので、複数の人が全く同じサービスを提供することはできません。そのため、「他の人が何人集まっても、そのたった一人に勝てない」という状況を作り出すことができます。すると、顧客の会社の景気が悪くなったとしても「その人だけは他の会社に渡したくない」と言うことが起こるのです。
そうなれば、契約を打ち切られるリスクは低くなりますので、リソースを分散させることができます。コンサルタント一人一顧客と言う状態を作ることもできるでしょうし、フルタイムで入らなければ、コンサルタント一人で複数顧客も行けますね。もちろん、影響力が少なければすぐに切られてしまいますが。

製造業でも同様のことがいえます。たとえば、商品に「かゆい所に手が届くサービス」を付加することで、顧客をファンにすることも可能でしょう。

中小企業がやってはいけないこと

私の考えですが、中小企業が一番やってはいけないのが「大企業から大量発注が来るので、生産量を増やすために投資をする」です。
こっちから見ると大量発注でも、相手から見るとほんの少し、かも知れませんよ。もしそうだったら、発注もいつまで続くことやら。もちろん、大企業の資材の方は、「まあ、少量だし、いつ発注が止まるかは分かりませんよ。代わりの会社もありますしね。」なんてことは決して言ってくれません。

結局

何度も言いますが少ないリソースで「もう、あなたの会社ナシでは生きていけない」と言ってくれる顧客を作りましょう。

対処療法的ですが、いつでも低コストで顧客を増やせるチカラを身につけることもお勧めです。契約を切られることにおびえる必要はありませんし、契約を切られても、「また探せばいいのさ」と前向きになれるので、精神衛生上も良いです。